13.幼き日の記憶:ミシェルの後悔

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 エヴァンが右手を差し出せば、ミシェルはわっと泣き出した。  そんな彼女の身体を抱き寄せて、あやすように抱きしめる。 「大丈夫、大丈夫だから」  ミシェルの頭を優しく撫でてながら、エヴァンは繰り返す。  大丈夫だよ……と。  すると、嗚咽混じりに言葉を絞り出すミシェル。 『……エヴァン、わたし……マリーを殺してしまったの。わたしのせいで……マリーは死んでしまったの』 「うん」 『わたしが……かくれんぼしようなんて言ったから……』 「……うん」 『わたしが言ったの……見つけるまで出てきちゃだめよって……。……そしたら……だから……っ』 「…………」  抱きしめたミシェルの身体を通して、エヴァンの頭にミシェルの記憶が流れ込む。  *  その日はミシェルの七歳の誕生日で、使用人総出でパーティーの準備に追われていた。  準備が整うまでの間、ミシェルとマリーは部屋で遊んでいるように言われた。  二人はいつものように遊び始めた。本を読み、絵を描いて、一緒に歌を歌った。その後、部屋でかくれんぼをすることにした。  じゃんけんで鬼を決める。鬼になったミシェルは言った。 「わたしが見つけるまで、出てきちゃだめよ」  ――その一言が、マリーの命を奪ってしまうとは思わずに。  
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