2.いざ、夜会へ

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 そんなエヴァンだったが、馬車が道を半分過ぎたあたりで、思いだしたように口を開く。 「そう言えば、サムは今どこにいる。また当日……と言っていた筈だが」 「……お兄様?」  三日前、アナベルの屋敷を出る際、エヴァンは確かにサミュエルからそう言われていた。「また当日会おう」と。だが、今さらながらここにサミュエルの姿はない。  そんなエヴァンの問いに、アナベルの方もようやく思い出した。そう言えば言っていなかったわね……と。 「伝えるのを忘れていたわ。今日、お兄様はシャーロット様のパートナーとして参加するのよ」 「シャーロット……。ああ、サムの婚約者の……」  エヴァンはその名を聞いて、合点がいったと言う顔をした。  今回の夜会の招待状は、一通につき二名までしか参加ができなかったはずだ。どうやって三名参加するのかと思っていたが、サミュエルがシャーロットと同行するというのなら納得だ。 「招待状はレディ・シャーロットを通して入手したものだったか?」 「ええ、彼女の家も慈善事業に力を入れていらっしゃいますから」  今日の夜会の主催であるエンバース子爵は慈善事業家で有名だ。サミュエルの婚約者であるシャーロットの家も同じく慈善事業に力を入れている。同じくそこに招待されたファルマス伯爵。――つまり、今夜の夜会は慈善家の集まりと言うわけだ。 「そんなところに俺が出席してもよいのか。我が家は慈善事業とは無縁だが」 「問題ありませんわ。シャーロット様とあなたはいずれ親戚になる間柄ですもの」 「まぁ、それもそうか」  話の区切りがついたところで、今度はアナベルの方がエヴァンに尋ねる。 「それ以降、アメリア様のご様子はお変わりなく? 何か心境を聞き出せましたか?」
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