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「念の為お尋ねしますが……アメリア様とは、あなたの妹君のことで間違いありませんかしら?」
「決まってるだろう。他に誰がいる」
「そう……ですわよね。って――え? 彼女、婚約なさったんですの?」
「だからそう言っているだろう。何度も言わせるな」
アメリアとはエヴァンと五つ歳の離れた彼の妹のことである。
エヴァンは今年で二十三。だから妹のアメリアは今年で十八になる筈だ。ちなみにアナベルはエヴァンの三つ下で、今年二十歳になる。
――にしても彼女が婚約などと、アナベルにはにわかには信じがたいことだった。が、エヴァンがそう言うのならそうなのだろう。
アナベルは話を進めることにする。
「どうしてせっかく成立した婚約を解消させたいなどとお考えに?」
「そんなもの、本人の望まぬ婚約だからに決まっている」
「ご本人がそう申されたのですか?」
「そうだ」
「本当に?」
「ああ」
「本当の本当の本当に?」
「しつこいぞ!」
「まぁ、ムキになるところが怪しいですわね。わたくしに嘘は通じませんわよ?」
「嘘なわけあるか! あいつは確かにこう言っていた! 〝自分は誰とも結婚する気はない〟とな!」
――誰とも結婚するつもりがない?
はっきりと言い切ったエヴァンの言葉に、アナベルは考え込んだ。なぜなら貴族令嬢で未婚となると、その先は修道女になるくらいしか道はないからだ。
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