ホワイトデーにサプライズしよう

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ホワイトデーにサプライズしよう

 ホークはカレンダーを眺める。  3月5日。ホワイトデーまであと2週間。  バレンタインデーに、セルティスから手作りチョコを貰ったので、何かお返しをしようと考えているホーク。だけど、普通にお菓子をお返しするのも嫌なので、なにか別のものをお返ししようとしている。セルティスには何が良いのだろう。頭を悩ませていた。  ホークは嬉しかった。あまり、バレンタインデーも興味なさそうだったので、セルティスが手作りチョコをくれるとは思わなかった。男っぽいところもあるけれど、バレンタインデーに手作りチョコをくれるなんて、女の子らしいところもある。そんなセルティスが愛おしい。  ホワイトデーに何かお返しをすること自体、初めてかもしれない。興味がなかったわけではないが、セルティスに会う前に知り合ったメナにも、あげたことはなかった。それどころではなかったくらい、大変な時期でもあった。  頭を悩ませながら、お店に行ってみることにする。  ホークは、商店街にやってきた。ここなら、何かセルティスに似合うものがあるかもしれない。じっくり見ながら、セルティスを想像し、何をあげれば喜ぶか考えた。 「難しいな……女の子って、どんなものが喜ばれるんだろう」 ホークは、ゆっくりと店を何件も回りながら、どんなものがあるのかを確認する。女の子だけど、セルティスは、あまり女の子っぽいのは苦手か。案外、女の子っぽいところがあるから、女の子っぽいもののほうが喜ぶか。  セルティスの喜ぶものというのは、難しい。性格も考えて、何が良いのかを考えるのだが、全くわからなかった。 「悩んでるね~兄ちゃん」 男性の店員が、ニヤニヤしながらホークに声をかけた。 「えっ? まぁ……」 ホークは店員に目を向けた。店員は何故、ニヤニヤしてるのか。不思議に思いながらも、再び商品のほうに目線を落とした。  イヤリングや指輪、ネックレスなどアクセサリーがたくさんあるが、デザインも豊富で迷う。セルティスに似合うのか、頭の中でイメージしてみる。やっぱり、かっこいいイメージが強い。 「女の子にあげるのか?」 店員はホークに訊くと、ホークは頷いた。 「だけど、どんなものが良いか、わからなくて。女の子らしくて、でも、凛々しくてかっこいいと思えるようなものありませんか?」 店員はしばらく考えてから、質問する。 「女の子の誕生日いつだかわかるか?」 「誕生日? 5月20日ですが」 ホークは疑問に思いながらも、店員に告げる。すると、店員はサッと石を見せた。 「パワーストーンだ。誕生石なんだよ」 「誕生石?」 ホークが聞き返した。  店員が出してきた石は、赤色というのか、赤にピンクと紫が混ざったような色だ。 「そう、彼女の誕生日、5月20日なんだろ? ロードナイトといって、自分の生まれた月の石を身につけると、幸せになると言われているんだ。このロードナイトという石は、包容力と寛大な心を持てるようにサポートをしてくれるんだ。あと、もうひとつ、この石も身につけるといい」 そう言って店員は、森林のような緑色をした石も取り出した。 「これも、彼女と同じ誕生日の石で、アベンチュリンという。これは、癒しのサポートをしてくれる石だ。アクセサリーにすることもできるよ」 ホークは店員に言われて、これは良いかもしれないと感じた。 「アクセサリーにしてくれるんですか? ちょっと時間かかるけれど、いいか?」 店員が確認する。 「いつ頃できますか?」 「3日くらいでできるけど」 「3月14日に渡す予定なので、それまでに受け取りに来ても大丈夫ですか?」 「いいよ」 「じゃあ、この、ロードナイトはネックレスに、アベンチュリンは、ブレスレットにして下さい」 ホークと店員のやりとりが続いた。 「わかった。気に入ってくれるといいな」 店員は笑顔だった。  3月14日、ホワイトデー当日。セルティスは、ホークに呼び出されて、ソワソワしていた。 (なんだろう、ホークから呼び出すなんて) セルティスは、いつものお気に入りのカフェで、ホークを待っていたが、今日は落ち着かなくて、コーヒーも頼んでいない。  しばらく待っていると、ホークがやってきた。 「悪い、待たせちゃったな」 「大丈夫だよ。どうしたんだ? 急に呼び出して」 セルティスは、ホークの声に動揺してしまった。ホークにわからないようにしていたが、バレバレだった。 「何、動揺してんだよ……俺まで動揺するだろ……」 「え?」 セルティスは目をパチクリさせている。ホークが動揺するってどういうことだろう。 「あっ、とりあえず、コーヒーで落ち着こう」 ホークはそう言って、コーヒーを頼んだ。  セルティスもコーヒーを頼んだのだが、いつもと違う雰囲気に飲めない。 「どうしたんだ? ホーク」 セルティスはもう一度、訊く。  ホークは、コーヒーを一口飲む。ホワイトデーのお返しをするだけなのに、こんなにドキドキするものなのか。 「えっと、このあいだのバレンタインデーはありがとうな。セルティスが、頑張って作ってくれたチョコ、凄く美味しかった」 セルティスはホークに言われて、動揺してしまった。 ガチャンッ 「げっ…あっつっー!!」 セルティスはコーヒーをこぼしてしまい、カップを割ってしまった。 「えっ、何やってんだよ! セルティス」 ホークは、すぐに片づけを手伝った。 「ごめん……あたし、動揺してて……」 セルティスは、ため息をついた。 「可愛いな。セルティスは」 ホークは笑顔を見せた。 「なぁ、これ、片づけたら、海に行こう。渡したいものがあるから」 ホークは優しく言うと、セルティスはキョトンとした。その目を見ていると、子供のようだ。  海に来たホークとセルティスは、波の音を聞いて落ち着いた。 「ホーク、渡したいものがあるって?」 セルティスが訊くと、ホークはフーッと大きく息を吐いた。 「今日はホワイトデーだろ? バレンタインデーで、手作りチョコくれたから、そのお返しをさ……」 ホークは、再び大きく息を吐いた。 「これ」 ホークは顔を少し赤く染めながら、素っ気なく、ピンクのリボンのついた箱を渡す。 「ありがとう。開けていい?」 セルティスは急に渡されて驚愕した。 「あぁ」 ホークは、セルティスに顔を見られないようにした。顔が真っ赤になっていて、とても、見られたくない。  セルティスは箱を開けた。 「うわぁ、綺麗」 ロードナイトのネックレスと、アベンチュリンのブレスレットを見て、セルティスは声を上げた。 「それ、セルティスの誕生石らしいぞ。自分の生まれた月の石を身につけると、幸せになるとか」 ホークは恥ずかしそうにしながら、セルティスに説明した。 「パワーストーンだね。あたし、好きなんだ。パワーストーン。ありがとう」 セルティスはアベンチュリンのブレスレットを手首にはめた。 「ねぇ、ネックレス、つけて」 セルティスはホークに頼む。 「お、おう……」 ホークは照れながら、セルティスにネックレスをつける。 「ありがとう、ホーク。どう? 似合う?」 セルティスは笑顔だった。ホークはドキドキした。女の子って不思議だ。アクセサリーを身につけるだけで、こんなにも綺麗になるのか。 「凄く似合ってるよ、セルティス。綺麗だな」 ホークは、セルティスの喜ぶ姿を見て嬉しくなった。成功だ。こんなに喜んでくれるとは思わなかった。 「ありがとう、ホーク」 セルティスは、ホークに飛びついた。 「おい、セルティス……どうした……」 「嬉しい。こんなサプライズしてくれるなんてさ」 セルティスはあまりに嬉しくて涙が出てきた。 「セルティス、なんで泣いてるんだよ……」 ホークはセルティスの涙を見て、困惑する。 「本当に嬉しかったから。ありがとう」 ホークは、優しい笑みを見せて、涙を拭ってやる。その後で、セルティスを抱きしめた。 ≪おわり≫
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