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隣っていうか向かいっていうか、私とまー君は団地の同じ階に住んでいる。私が鍵っ子なことをいつも気に掛けてくれるのに、家に上げてって言ったりうちに来てって言ったりすると二言目には「通報されちゃう」。
でもついに今日、私は高校を卒業した。胸に造花を飾ったまま、革っぽい筒を持ったままでまー君の家のチャイムを押す。
まー君が出てきたのと同時に、握りしめている筒を見せた。
「見て! もう子供じゃないよ!」
『子供に手は出せません』って言われても言い続けていた言葉の返事を今日こそ貰えるはず!
「好き!」
いつものようにタックルした。なんでいつもと同じ頭ポンポンなの?
「あのね、俺が『子供』って言ったのは学生って意味じゃありません。自分の言動に責任を持てない人はいつまで経っても『子供』です」
悔しくてさらに強く抱きつく。
「持てるもん!
私を後部座席にしか乗せてくれないところも、カレー好きなのに辛いの苦手なところも、こんな田舎で生まれ育ったのに虫が苦手なところも全部好き!
カレーを作る時は思いっきり甘くして、虫からも守ってあげる覚悟で言ってるもん!」
私の頭に乗せられている手がずっと動かないままだから、チラッと顔を見ようとしたらまー君の手に少し力が入って止められた。
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