丑の刻参り

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静かに音に近づく。 すると、いた。 いや、いたというのは正確ではない。 いなかったと言えばいいのかどうか。 なんとそこには、五寸釘で打ち付けられているわら人形と、打ち付けている木づちは見えるのだが、誰の姿もなかったのである。 ただ木づちだけが、宙を激しく動いていた。 ――ひえっ! すると木づちの動きが止まった。 俺は前回と同じくとっさに木の陰に隠れた。 しばらくすると、またカンカンカンという音が聞こえてきた。 ――気づかれずにすんだかな。 俺は逃げるようにその場を後にした。 ――それにしても……。 死んでからも丑の刻参りをするなんて。 なんて業が深いのだろう。 俺はそう思った。        終
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