2/7
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 こんな私でもずっと付き合ってる人がいる。名前は勇次(ゆうじ)。名前に似つかずひょろいおっとりした顔の男だ。名前負けしてるなんて言われるのは昔からで、一時はそれにいちいち怒っていた勇次も、最近では耐性がついたようで笑い話にしている。  勇次に出会ったのは中学の時。どこか波長が合って何となく仲良くしていたら、周りの友達から囃し立てられて何となく付き合った。勇次が初めての恋人である私には勇次に対する気持ちが恋かなんて分からなかったけど、みんなはこうやって恋人を作るんだと思っていた私は丁度いいやって流された。  一方の勇次も私と同じ気持ちだということは言わずとも感じられた。別にべたべた体を触ってくるでもなく、かといって私に興味を示さないでもない。ただ付き合う前から変らない「仲良し」の関係を「恋人」という名前にすり替えただけの関係を、私たちは数年も続けている。  そんな関係は、中学高校を卒業し、同じ大学に入った今でも変らない。周りは「このまま結婚だね」ってよく言うから、きっとそうなんだろうと私も思っている。勇次ともその話は時々しているし、こんなに長く付き合っていれば普通は結婚を考える。それに今別れたとして新しく結婚する相手を探すのも面倒だ。勇次も私も普通に結婚して普通に幸せになりたいから、たまたま付き合っている私たちがわざわざ別れる必要もないというわけ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!