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   「あれ、優奈誕生日いつだっけ。」  休日の朝、昨晩から勇次のアパートに泊まっていて携帯をいじる手を止めず布団から出てこない私に、既に顔も洗って歯も磨いてスッキリしている勇次が話しかけた。  「さあ」  元々自分の誕生日に微塵も興味がない私は誰にも祝われないと歳を食ったことも気づかないのだが、適当な返事を返した直後に昨日おめでとうと誰かに言われたのを思い出した。  「あ、昨日だわ。」  「まじかよ」  彼女の誕生日を忘れたことにを現してみた勇次だが、それにも深い思いがないのを私は知っている。だって私の誕生日を忘れるのは今年が初めてじゃないし、そもそも本人がこの調子だから他人がそれに気を病む必要もない。私だって、何度も勇次の誕生日を忘れている。  「...これからどっか行く?」  「んー、どうしよっかなあ」  正直体が落ち着いている布団の中からわざわざ這い出る気力がなく、今すぐ動きたくない私は再び生返事を勇次に返した。それを察した勇次は「まあ考えといて」と言葉を残し、私に背を向け低いテーブルに置いてあったパソコンを開いた。互いに背を向け合っている状態で、スマホを触るのにも飽きた私は頭だけ振り返る。課題でもしているらしい勇次はノートパソコンのキーボードを鳴らせながら、時折頭良さそうに顎に手を当てて考える仕草を見せる。あんまり頭がいいわけでない勇次なのに自分に似合わないことをするんだなと鼻で笑いそうになった私は、再び顔を眩しいスマホの画面にやった。
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