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 「勇次はさ、ほんとに私でいいの?」  勇次の成長に感動していた私も結婚について少し考えていると、ふとそんな疑問に辿り着いた。流石に今度ばかりの質問には「何急に」と手を止めて不審の念を見せた。  「だって勇次はいっぱい友達いるじゃん?その中にいいなあって思う人とかいないの?」  恋人が恋人にこんな質問をするのは可笑しいと分かっていても、特別な恋愛関係でもなく付き合ってる私はそんな疑問を抱かずにはいられない。勇次は少し考える間を見せて、「考えたことなかった」とぼそっと言った。  「でも、それなら優奈も同じじゃん。何なら優奈の方が人と関係いっぱい持ってるでしょ、変な意味じゃなくて。」  「ないよ、全然。飲み会は喋って終わりだもん。別に仲良いわけじゃない。」  「俺も同じだわ。」  上手く行ってるように見えて結局二人とも寂しい人間だと互いが分かった時、私を見下ろす勇次を見上げて私たちは薄い笑い声を上げ合った。  「ずっと変んないね、私ら。」  周囲に溶け込んでいると思い込んでいたものの冷静になればそうでもないと感じた時、とてつもない孤独感を感じる。自分は何のために好きでもないドラマを見漁って、興味もないファッション雑誌を穴が開くほど読んでいたのだろうか、と。きっと勇次も同じ気持ちだということは顔を見れば分かる。部屋の隅に積み上げられた、埃を被った多種雑誌が圧迫する六畳一間の一室で、私たちの重い溜め息がさらに空気を薄めてしまった。
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