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Ⅰ
桃色が季節を色づけ始める三月の日。
共に戦った記憶を懐かしんで、別れを悲しむ日。
旅立ちの勲章であるピンク色の柔らかい人工物を胸に付け、これまでの労をねぎらう万人おそろいの証書を黒い筒に入れて、数年を費やした校舎と別れを告げる。
自由になった生徒の誰かは、未成年社会の呪縛からの解放に声を上げて喜びながらヘアサロンに駆け込んで行ったり、別の誰かは最後となると急に情が沸いたように散々嫌がっていた教室に入り浸ったりしている。
その誰かの一人である私はと言うと、涙をボロボロ流す友達に付き添ってその背中をさすりながら、他の友達とも一緒にゆっくりと学校を後にした。涙を流すのが普通なんだと、カラカラの目の奥に必死に神経を集中して、やっとの想いで涙を頬に伝わせた頃にはもう友達は笑っていた。
そんなこともあったななんて、はしゃぐ卒業生が通り過ぎたのを目の端に入れた時蘇った記憶を思った私は、もうすぐ大学三年になる。
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