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アブダビに来てからのあたしは、髪にはスカーフもなにも巻かず、上はブラウスかチュニック、下は必ず踝まであるワイドパンツで過ごしていた。
しかし、砂漠で過ごす間は「ニカーブ」と「アバヤ」という伝統的なイスラム女性の服装になる。
ニカーブはわずかに目の部分だけが開いている頭巾で、アバヤは全身がすっぽりと覆われているチュニックを長ーくしたような貫頭衣だ。
マーリク氏がアブダビ市内で滞在するホテルで、あたしの身の回りの世話をしてくれていたサマラさんが着ていたスタイルである。
全身黒尽くめの出立ちはやっぱり異様で、日本人のあたしにとっては違和感バリバリであったが、この灼熱地獄の砂漠の下では意外と快適だ。
……っていうか、実に「合理的」だ。
ニカーブは目だけしかまともに外気と触れていないため、砂塵の侵入は本当に最低限である。
(さらに、サングラスをかけているので「完全防備」だ。)
また、暑っ苦しくて脱ぎ出したくなると思われた「まっくろくろすけ」なアバヤは、差すように痛い直射日光をうまい具合に遮ってくれるので、思ったよりもずっと暑さを凌げるのだ。
というわけで、海岸部のもわーっとした高温の湿気が(日本の真夏の気温で梅雨の時期の湿気だと想像してほしい)ここまで内陸にやってくると格段に乾燥しているため、日差しさえ遮られればかなり過ごしやすく感じられた。
さらに、このニカーブとアバヤのおかげで、全身砂まみれになっても、車内の座席が砂でジャリジャリしても、こちらも思ったほど気にならないでいられた。
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