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「モナ・リザの絵って、すげー怖くないか? なんつーか、あの絵ってめちゃくちゃ苦手意識あるんだよな……」
「意味分かんない。どのあたりが駄目なの?」
浅原は指でくるりくるり、と鉛筆を器用に回し終えると私を真剣な表情で見つめてくる。スケッチブックに私という人間を描写していく。
「ほら、左だか、右だか分からないけどさ。片一方の顔は哀しんでるように見えて、もう片方の顔は笑ってるように見えるだろ。
どっちなんだよ、ってなるだろ。なに考えてるのか分からねーんだもん」
「二面性があっていいじゃん。女ってそういう生き物だと思うし」
「うわっ、そういうことかよ。レオナルドの奴、女に苦労してたんだろうなぁ……」
軽口を叩いた浅原が真剣な眼差しのまま、私をまた見つめてくる。その顔は垂直に立てた鉛筆によって半分に割れている。
私はじろじろ見られていることに少し気恥ずかしさを感じてしまい、お尻をずらして座り直した。
心臓の位置も少しずれてしまったのか鼓動がトクントクンと少し早くなっていく。
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