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「私、もう帰るね……」そそくさと椅子から立ち上がる。学生鞄を手に取る。さようなら。また会う日まで。 「ちょっと待てって! 冗談だって!」  慌てた浅原が私の腕を掴んで制止してくる。  驚いておもわず肩が跳ねてしまい、右肩にかけたばかりの鞄のストラップが鞄ごとすとんと床に落ちてしまった。  私の右腕を大きな掌がきゅっと締め付けてくる。血液が逆流して心臓に押し戻されたんじゃないかと思うくらい、胸の奥が締め付けられた。
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