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とくに風も吹くこともなく、暖かい。もうすこし寒かったら、他にもお客さんがいたかもしれない。でも、そもそも、よく行くコンビニの前なのに、おでん屋があることを見たのは今日がはじめてだったことに気がついた。玉子に箸を伸ばしたのを少しと止め、大根に少し切れ目を入れた。四分の一にして、はふはふする。
「少し、代わりましょうか?」
と、僕は言ってみた。
おっちゃんはおでんのプールから出汁昆布を取り出しているところだった。僕の提案を聞き、動きがとまった。菜箸でつまんだ昆布が中空で浮かんでいた。
「トイレ」と僕はいった。
昆布がまな板の上に置かれた。
「休憩」と僕は続けた。
菜箸が円柱の箸立ての中に収められた。
「承知しました」とおっちゃんが言うわけがなかった。
「大変ですね」と僕が言うと、おっちゃんは「いらっしゃいませ」といった。振り返ると、おばちゃんがいた。いつもいくコンビニで働いているおばちゃんだった。
「あら、いらっしゃーい」と、おばちゃんはいった。
なんだかよくわからなかった。
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