夜の帳が下りる頃

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「まだだよ、これからだ」  口内から吐き出した白濁を掌に乗せた長谷川さんを見詰め、指先が隠れた奥の後孔へと向かう。  恐怖と混乱が襲いかかった。 「ちょっ……嫌だ!」 「知らない?男同士はね、ここ、使うの」 「やだぁ」 「大丈夫、力抜いて」  足を無理やり割り開いてソコに白濁が塗られると顔が引き攣る。  涼義兄さんを好きになってから男同士のセックスでは後孔を使うのは知識としてはあったけれど、少女マンガを読んでるみたいに自分のことじゃないから興奮出来た。  でもこの人は違う。  この人には我慢なんて出来ないし、怖い。 「お願い!もう嫌だ!本当に……あぁっ!抜いて!やだっ」 「力入れると痛くなるばっかりだよ。男同士だって気持ちいいんだから」 「嫌だ!長谷川さん!!やめっ!抜いてぇ」  違和感に体は自然と力んで、深くなる指は皮膚を捲ってその痛みに汗が飛び散る。 「アァッ!!」 「イイ所見つけたぁ」  ニヤリと笑う長谷川さんは最初の可愛らしいイメージなんてもう無かった。欲に狂い、俺を虐めることで生まれる愉悦感に黄ばんでるようにも見えて。  でも体はソコを掠めると強い快感を走らせる。今までの自慰行為なんてバカバカしくなるほどの快楽が身体を支配する。でもやっぱり心は拒絶したまま。 「ね?気持ちいいでしょう?」 「あぁ、や……あっ、あ、あっ」 「和希くんがお母さんのこと説得してよ。そしたら別れなくて済むんだからさ」 「あっ、ひぅんん……あ、あ」 「凄い、和希くんは素質あるんじゃない?」 「嫌だ……嫌だっ、もうっ、やだっ」 「何してんだ?テメェ!!」  その声の後、ズルッと抜けた指の気持ち悪さに体を丸めてた。涼義兄さんが凄い勢いで長谷川さんの髪の毛を掴むのが見えたけど、止めようと思う気持ちも削がれて何も出来なかった。 「誘われたんだって!やめろよ!」 「俺の弟が誘う訳ねぇだろ!バカがっ!」 「痛いって、涼一!!」 「帰れっ!今すぐに」  バタバタと騒がしく出て行く長谷川さんの背中を見送り、下半身丸出しの情けない格好を晒してる俺に涼義兄さんが近付いて来る。  あの時に知った。同じ屋根の下で暮らしていても、涼義兄さんには涼義兄さんの香りがあること。 「和希!……ごめんな、ごめん、和希」  抱きしめられると堪らない気持ちで胸がいっぱいになる、そんな香りがあること。  
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