夜の帳が下りる頃

22/30
前へ
/30ページ
次へ
 スッと目が細められ、男らしい顔つきになった義兄は腕に力を込める。背中が自然と押されて胸が涼義兄さんにぴったり重なる。  緊張しているのに目を逸らすことはしなかった。もしも目を逸らしたら義兄はまた迷ってしまうんじゃないかって、この決断をまた変えてしまうんじゃないかって。 「男と寝たことある?」  涼一義兄さんの声は甘い響きで、緊張とこれから起きる事に心臓が激しく高鳴ってしまう。問いかけに言葉が出なくて、首を振るや否や涼義兄さんのくちびるが俺のをとらえた。  目を閉じることも忘れて、そこに感じる温かさが心地良いのにドキドキして、固まったまま。  すぐに離れていく涼義兄さんの目がうっすら開かれ、硬直している俺と視線が合うなりフッと笑う。それだけでまた涙が流れてくる。 「目、つぶって」  言われた通りにギュッと目を閉じる。  またすぐに重なるくちびるはやけに熱く、そこに神経が集中していく。身体の力が抜けるまで何度も離れてはまた重なるを繰り返し、頭を撫でられながら髪を弄られる。時おり触れる頬は撫でられ、かちかちになってた体は少しずつ解れていった。 「キスもしたことない?」 「……な、い」  ボーッとした思考回路で返事をしても、もう義兄がどういう意味でそれを聞いたのか分からなかった。ソファに背中を預け、されるがままの人間相手じゃ楽しくないはず。そう思っても肘を掴むだけで他に何も出来ない。 「そっか……じゃあ、」 「え……」 「こういうのはもちろん初めてだ?」  くちびるの上で囁かれ、また触れるキスに自然と目を閉じた。でも次の瞬間、隙間から義兄の舌が差し込まれ、その生々しい感触に思わず肩を押した。  優しい動きが口内を刺激して、今まで感じたことのない近さに息が出来ない。  苦しくても絡まる舌が思考を奪っていく。角度を変えて深まると舌をチュッと吸われて背中に甘い電流が走る。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

238人が本棚に入れています
本棚に追加