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2、Touchdown
──事故発生 10分経過
続々と集まるレスキューや救急車。
野次馬たちを警察のバリケードが牽制する。
しかし喧騒はやむことは無い。
「おじさん!分かりますか!!」
トラックの窓から頭をだらんとさせて外に出ている男性。
血を流し、意識はなかった。
「おい!おいお前!」
脇の間をロックされ、その場から話される赤瀬。
「っ!?離してください、あの人の呼吸が止まりそうだ」
「安全確認取れてない。現場の安全確保が取れる前に何人たりとも動くな、分かったか!!!」
睨み合う2人。
おそらくレスキューの長官らしき人物。
周りに集まってくるレスキュー隊たち。
「だったら早くあの人を出して!なんのためのレスキューだ、この時間が無駄だ」
「なんだと……なんのためだと?……無能だって言いたいのか?貴様」
「そういうことです。つべこべ言わずに早く動いて!この時間も無駄です」
目の前の命のことを考えたレスキュー隊員は赤瀬の言葉を飲んで動きだす。
「ちっ…お前、覚えとれ」
「触診で気胸の恐れがあります。脱出出来たら運び出してください。僕はあの男性を診ます」
強面のレスキューは頷くと男性の救出を開始した。
重機によって扉をこじ開ける。
すると、
「……ん?」
赤瀬は男性の治療を開始していた。
「救急隊の方、あれは」
白車〈救急車〉が3台到着した現場には救急隊員がちらほら見受けられる。
赤瀬と連携して処置に当たっていた。
車とトラックに挟まれた通行人の男性は胸に車の破片が刺さり重体だった。
「ドクターヘリです」
救急隊員が答える。
『春坂救命センター』
そう書かれたドクターヘリが近くの空き地に着陸する。
「僕の病院だ」
中から3人の姿が。
現場に向かって走ってくる。
ヘルメットと救命用の隊服。
大きな救命用カバン。
スクラブからは救急のスタッフだと伺える。
「おいお前、医者か」
「春坂救急の赤瀬です」
「なにぃ?」
「こちらの男性は開放性胸部損傷と刺傷。肺損傷の可能性が高い。トリアージ優先順位高いです」
「……」
おじさん先生が赤瀬をじっと見る。
「まぁ焦るな。お前の判断が正しいとは限ら─」
「石田先生、若いやつの言う通りこの方を優先しましょう」
若い男性ドクターの目を見て石田は判断した。
「………分かった。椎名、お前一人で行けるか」
「分かりました」
椎名と呼ばれた若手のドクターはストレッチャーをドクターヘリに搬入した。
「俺は石田。お前の上司だ。お前でも何か出来ることはあるのか?」
「はい」
石田はブレない赤瀬の目を見て言った。
「井山、赤瀬につけ」
「はい。井山です。ナースです」
赤瀬は頷くと状況を説明する。
「スタッフコールで詳細は聞いてますよね。残り患者2名です」
「了解だ。お前あの患者いけ。俺はトラックの運転手のとこに行く」
「分かりました。あの患者は遅発性の重症気胸の可能性があります」
「………」
赤瀬は運び出された患者の元へ駆けつける。
「井山……あいつは出来るかもしれん」
「先生が唸るなんてよっぽどですね」
「…………さぁ行け」
「はい」
石田はレスキューの元に近づく。
「おい石田。あいつはあんたの所のやつか」
「どうした白井」
レスキュー隊長の白井 上。
石田は白井に歩みを止められる。
「あいつトラック突っ込んできたぞ。ちゃんと指導しとけよ」
「悪いな……若いのはバカばっかだ。それよりいつ出せる」
「足元が酷く歪んで10分はかかる。この人を動かさないとトラックと車も動かせんから人がいるか確認すらできない」
「分かった。出せたら教えてくれ。先に診ていいか?」
「頼む」
石田は胸ポケットのペンライトを出すと瞳孔を確認する。
「んー左開いてるなあ。救急に春坂繋ぐように誰か言ってくれ」
「分かりました!」
「………」
服に手をかけてそのまま破る。
呼吸器をつけられた患者は苦しそうに呼吸していた。
「浅呼吸と皮下気腫……なんだこれ」
「先生!呼吸が止まりました!」
「ドレナージする」
「ここで手術ですか?!」
「消毒とドレーン用意してくれ」
「はい!」
(なんだどうなってる。遅発性の気胸なんて聞いたことがない……それより脱気するしかないな)
「白井……ここでチェストチューブ入れたらすぐに運びたい。頭やってる」
「分かった!5分で終わらせる」
石田は頷くと胸壁にメスを入れる。
───────
「よし、もう大丈夫ですよ」
白車の中で行われる治療。
鎮静剤を打たれ眠っている女性。
ちょうど出発するところだった。
「軽い脳震盪ですね。春坂に搬送して様子見ましょ…う……」
「どうしました?先生」
「……井山さん…リュックが二つあります」
「え?」
赤瀬たちの目に留まるもの。
赤いリュックサックと青いリュックサック。
「誰かが残っている可能性がある。この病態ならドクターは必要ありません。僕は現場に残って確認します。井山さんお願いします」
「ちょっと!先生!!」
赤瀬は現場に向かって一目散に走っていった。
次回予告:救急車に乗っているふたつのリュックサック。発見されていない患者を探し求めて走り出す赤瀬。レスキューの垣根を越えた先にある命の物語とは…。
。。。こぼれ話。。。
赤瀬くん。
僕のイメージでは、ガッシュベルやツナのようにパッチリ二重のクリクリめんたま男の子です。
はい、そうであってくれ。
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