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「……何すんだよ……!?」
平良が頭を抱えながら紫雨を見上げた。
「学級委員が言ってただろ?頭に叩き込めって。だから叩きこんでやったんだよ」
紫雨は口の端を引き上げながら笑った。
「怖いからって、どっかで聞きかじった週刊誌の三流記事みたいな話をバラ巻くなよな。矢島さんはそんなんじゃねえよ」
「はあ?」
平間は紫雨を睨みあげた。
「お前に何がわかんだよ?ちょっと仲良くなったからって調子乗ってんじゃねえよ。あのね、加害者っていうのは自分の都合のいいように話を捏造するもんなの。矢島の話よりもそこら辺の三流週刊誌だっけ?の記事の方がよっぽど信憑性あるね!」
紫雨は怒りに鼻を引きつかせながら言った。
「俺は矢島さんと事件について一度も話したことねえ。それでもあの人のこと知りてえって思ったから調べたんだ」
「ネットでか?それこそ信憑性に欠けるだろ!」
平良が唾を飛ばしながら言う。
「ネット?そんなの倉科君の美麗な顔を拝むときにしか使わないっつの」
紫雨が金色の目で平良を睨んだ。
「俺が読んだのは、裁判記録だ」
「―――裁判……記録?」
平良がポカンと口を開ける。
「ああ、そうだ。そこには13人の生徒がどのように変貌し、どのように追い詰められていったかが事細かに書いてある」
女子たちが顔を見合わせる。
「矢島さんは確かに一人殺してる。でもそれは同級生の猪股って人と宮城って人を守るためだ」
サッカー部の井上が、その名前にピクリと反応した。
「その後矢島さんは猪股と倉科君と高野って女の三人を火事の中から救い出してる。そんな人が、女レイプして自殺させるわけないだろ。適当なこと言ってんなよ!」
平良が唇を噛みしめる。
教室がシンと静まり返った。
ーーーガラガラ。
古いドアが軋みながら開かれ、後ろのドアから矢島が入ってきた。
「………?」
矢島は教室の異様な雰囲気と、立ち上がった紫雨とその周りに散らばるプリントを一見してから、再度紫雨を見上げた。
「ーーーなんだ紫雨。祭りか?俺も混ぜろよ」
平良が椅子に座ったまま後退する。
他の生徒たちも慌てて机を避けた。
「残っ念。今、終わったとこ」
紫雨は平良の机からプリントをとると、それを矢島に渡した。
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