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「すげえ。あんたが強いのってマジだったんだな」
夕陽が沈もうとしてる屋上で、柵にぶら下がりながら紫雨は矢島を振り向いた。
「何秒であの男たちを倒したわけ?」
「知るか、んなの」
矢島は学ランのポケットから取り出した煙草に火を付けながら言った。
「てか、帰ったんじゃなかったんだ?」
「忘れもんを取りに一旦家に帰っただけだ」
「この時間までぇ?」
矢島は白い煙を黄金色に光る空に向けて吐いてから言った。
「クリーニングに時間がかかったんだよ」
「?」
紫雨が矢島を見つめると、彼は自分が羽織っていた学ランを紫雨に渡した。
「でも今まさに、煙草の匂いついたけどな」
―――あ。
『矢島さん。学ラン余ってねえ?秋になったら要らないやつ1枚欲しーんだけど』
―――覚えててくれたんだ。
紫雨はそれを無言で受け取った。
「学ランなんて、ボタンさえ付け替えれば大体同じだろ。そもそもすでに残ってるボタンのが少ないしな」
矢島は煙草を咥えながら言った。
「ボタン位、つけられんだろ?」
「……つけられたり、つけられなかったり、ラジバンダリ?」
「うっせーよ。バーカ」
矢島は笑いながら、涙でグシャグシャの紫雨の頬を指で弾いた。
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