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寧人は作業を続け、なんとかデータの修正ができ、古田にメールを送る。ふぅ、と体の力を抜いて気づけば昼を過ぎていた。
1kのボロアパートから3ldkのマンションに引っ越しをし、綺麗に片付いた部屋、綺麗な水回りに感動している寧人。
ふと鏡に映る彼の姿も、元美容師の一護の手にかかればすっきりとした。
お腹を空かせて台所に行き、冷蔵庫にはメモが貼ってある。
「お昼はカレー炒飯、野菜たっぷりに仕上げました。あとクックメーカーでお昼過ぎにスープができるようにセットしておいたから食べてね」
と一護の可愛い文字で書かれていた。台所の机の上に自動調理機のクックメーカーが置いてあり、それの蓋を開けると美味しそうなミネストローネ。トマトの香りが漂う。
栄養満点の料理が用意されているという、今までにない生活に寧人は仕事に精が出る。
ましてや夜になると一護によるマッサージで癒され、最後は射精……今までは欲望の最下位に近かった性行為が食欲睡眠欲を追い越せ追い抜かせ状態。
「はぁーん、幸せダぁ……あっち!」
熱々のミネストローネで舌を火傷する寧人。と同時にビデオチャットの呼び出し音。寧人は慌ててパソコンまで向かい座って出る。やはり古田からである。
「お、今は着替えたか」
「着替えました……あ、お疲れ様です」
「おう、データありがとな。ばっちし修正できてたけど……それだけ? 文章にさぁ、直しました、ご確認よろしくお願いしますとかさ、そういうの添えてね」
「は、はい……すいません」
「たく、何年社会人やってるんだよ。って全く社会に出ずに家で引きこもったたけどな」
古田はかなりネチネチといびりだす。前からそんな感じであるが、一緒に組むようになってからさらにひどくなった。
「今からまたちょっと話したいけどいいか」
「えっ、その……」
「なんだよ、そのって」
「は、はい……どうぞ」
寧人はお腹を空かせてしまいさっきのミネストローネも食べたい気持ちだが古田には逆らえなかった。
2人は上司と部下の関係だが寧人の方が年上である。さらにSEと営業、部署が違うし昇格も古田は順調にしていたため立場が古田の方が上である。だから寧人は年下の古田に対して敬語を使うのだ。
話はというと最初は仕事や話だったが、ネチネチと寧人に対することも話し始め、取り止めのない話が続く。その度、寧人は俯いてはい、はいと謝ってばかり。
古田はそんな寧人をみてニヤニヤしている。と、その時に一人追加でビデオチャットに入りたいという通知が入った。
なんと一護であった。
「社長?! あ、そうそう二時過ぎから僕とビデオチャットしたいと言ってたから鳩森も参加してくれ。こないだ提案したシステムのことだ」
「は、はい……」
寧人はドキドキしている。なぜならば仕事をしている一護の姿がかっこいいからである。
長い髪の毛もひとつにすっきりと縛り、長身に体型にあったスーツをビシッと着こなす姿が寧人にとっては憧れなのである。
そしてビデオチャットに一護が入ってきた。
「お疲れ様ー、お二人とも!」
にこやかに社長、一護が映った。
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