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「鳩森くん、すまんがその提案はもう違うものが出してしまってもうプロジェクトが進行している。そのサポートをしてくれ」
数日後、寧人は本部からのメールを見てフゥ、と息を吐く。
またか、と。でもそれに関しての業務をこなせばいいのだ。
そのメールとともに割り振られた仕事内容も送られて一日またそれと向き合うのだ。
またその前にとフードジャンゴのアプリを開く。また麻婆丼が上位に上がっている。
たくさんの店舗の様々なメニューがあるのにもかかわらず彼はまた麻婆丼。この間の麻婆丼の味が気に入ったようだ。
ご飯と麻婆豆腐を一緒に食べられる。効率が良い。
腹を満たす時間を早めれば仕事をする時間も増える。彼なりの策。
もう40歳間近。こんな生活をし続け恋人も無し、よって人との性経験ゼロである。
かと言って性欲がないわけではない。それなりには自慰行為するが仕事、食事、睡眠で性欲は一番下。
特にタイプの女性はいない。色々と趣向を凝らしてきたがそろそろマンネリが来たようだ。でもそれは別に気にもせず、ムラッときたら出せばいい、排泄と同じものだと割り切っている。末期状態だ。
たまに電話で実家から結婚はまだかというのがあったがさすがに三十五を過ぎてからは親も諦めたのか結婚ということどころか電話もなくなった。
特に欲しいものもない、欲しいと言えば仕事で使う身の回りのもの、パソコン、それに関する本、生活に最低限必要なもの、家賃、食費、通信費、公共料金だけ。お金は貯まる貯まる。
「一人で寂しくないですか?」
「うわっ!」
寧人はすっかり麻婆丼を頼んでいたことを忘れていて仕事に熱中していた。
後ろにはまたあの配達員。イチゴである。
「こないだはGOOD評価ありがとうございます!また来ちゃいました」
「お、おう……」
「てか、またドア開いてました……多分あれ、壊れてますよ」
そう言われて寧人はダダタッと玄関に向かうと確かに玄関は壊れている。さすが築50年のアパート、とがっくしと頭をうなだれる。
それなりの貯蓄があればもっといいマンションを借りるなり買ったりもできるが大学時代からずっと更新も引っ越しも家探しも面倒だからと住み続けてるある意味アパートの長老的な存在である。
「どうしよ……管理人さんに……でもまだ仕事が」
「仕事も大事かと思うけどこれじゃ危ないよアンタ。古い部屋の割には部屋の中は最新パソコン、ルーター、寝てる時に泥棒が来たらかなりの損失だよ」
「でも……」
「まずは麻婆丼、冷めないうちに」
配達員の一護はニコッと麻婆丼を差し出す。いい香りがする。ゴクリと寧人は唾を飲み麻婆丼を受け取ると蓋を開けて勢いよく口にかきこむ。
その食べ方からして相当お腹が減っていたようだ。あっという間に半分以上食べていた。
「わぉ、すごい食べっぷり……」
一護がびっくりして寧人を見ている。
「てかお前、いつまでいるんだよ」
「あっ……それよりも管理人さんに連絡しないと」
すると寧人はポカンとした。
「管理人さんの名前わからないし、電話番号もわからねぇ!」
「うそーっ! どうするのっ」
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