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あれから寧人は調べに調べて管理人に連絡し修理業者とともに立ち会ってもらい、ドアの修理に時間がかかると言われてしまったのだ。しかもお金も。
「どうしよう……僕が壊したわけじゃないのにふたんしなきゃだし、このまま壊れたまま何日間いたら」
寧人の動揺は酷いものだった。いつもの日常が変わるとどう対応すればわからない。パニックに陥ってしまうようだ、
するとそんな鳩森に対して
「うわっ」
一護抱きついた。人に抱きつかれるのに慣れてない寧人はアワワとさらにパニックになる。
「落ち着いて、落ち着いて」
一護が寧人の呼吸を整える。寧人は最初過呼吸気味だっだが低くて落ち着いた声と呼吸のリズム、そして一護に背中をさすられ次第に落ち着く。
気づけば目から涙が出ていた。が、寧人はハッとして一護から離れる。
「あ、ありがとう……落ち着いたよ」
「よかった。こんなところで籠もって仕事だから無理もないよ」
「昔からこんなんなんだ。今の会社に入社できたのも奇跡……リモートワークできる会社で本当によかった。誰にも会うことがないから」
すると業者の人が訪ねてきて応急処置で何とかドアのロックはできるよう装置をつけてくれたがあくまでも応急処置である。
「よかったじゃん、これなら安心して寝られる。変にこじ開ける機械でやってきたらダメだけど」
「うん……そうだな。じゃあ俺は仕事を再開するよ。まだたくさん残ってる。寝る時間も少しずらす」
と寧人は財布から札を抜き、一護に渡す。やはり一護は拒否をするが
「数時間もここにいてもらって君の仕事量を減らしてしまった。それに見合った金額かわからないけど……ありがとう」
と寧人はさらに財布から出す。
「そんなの気にしないで。それに金額も見ずにお金出して……」
とまた財布から一枚……その手を一護が止める。
「人とのコミュニケーションじゃなくて金で解決するなんてだめだよ。僕がここに君と一緒にいたのも心配だったから。一人でいたらパニックになって下手したら一人で死んでたよ」
寧人はうなだれる。昔から人見知りで引きこもりも経験した。何とか高校を卒業し大学も入ったが人と馴染めなかったが自分の将来のためと思い孤独と戦いながら卒業まで駆け抜け、就職活動もやはりほとんど面接でつまずき落ち続けだが三月末に技術を買われて今の会社に入社した。
入社してもやはり馴染めず、ただ仕事をこなす日々。
人と関わると感情が抑えきれなくて数年休職したこともあるが何とか復帰して現在に至る。出社しなくても良い、人と会わなくても良いなんて良い環境だと思ったが……メールや電話、テレビ会議が苦痛である。
寧人はもう仕事に打ち込む以外は先が見えない、綱渡りの状態であった。
そこに現れた謎の配達員。
「あ、そうそう。申し遅れました。多分アプリに表示あると思うけど登録ネームイチゴ。運転免許も見せるね。本名は菱一護(ひしいちご)」
菱一護は免許証を寧人に見せる。
「26歳? まだ20代!」
「はい、そうです」
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