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「じつはさー、恋人から家追い出されちゃって。好きな人ができたから出て行けってさー。ありえないよねー」
ほぼ独り言のように話しながら部屋のゴミを片付ける一護。寧人はとりあえず仕事をしている。
「恋人……そりゃかっこいからモテるよな」
「そう? かっこいいかなー。ありがとう。でも酷くない? あっという間に出ていけって言われてさー。僕仕事で忙しいのに……荷物勝手にまとめられてポーイだよ? とりあえずお店の一室に泊まってるけど……家電とか全部取られちゃったし……悲しいー」
「ひどいやつだな……最低だよ。ありえない」
「でしょでしょーっ、まぁ今夜はなんとかなりそう……助かるぅー!」
寧人は完全に信用はできないがとりあえず今日のお礼として一晩だけ一護を泊めることにしたようだ。
荷物は貴重品のみで、お店にも一部、今度恋人の家に乗り込んで取り返してくるそうだが。
会話をしながらも一護の作業も早くあっという間に散らかった部屋もきれいになり、水回りもきれいに掃除をしてある。
「ふぅ、やりがいがあったなー」
「……ジュースくらいしかなくてごめん。なにか出前取ろう」
「なんだったら、なにか買ってくる」
二人は一瞬目を合わせて息を合わせたかのように
「麻婆丼!」
と口にした。
「ラジャー!」
「では、お待ちください、お客様」
とサッとフードジャンゴのジャンバーに帽子を被り一護は外に出た。
寧人はその身のこなしにドキッとした。自分よりも背が高くセクシーなロン毛。
ふと自分の髪の毛を触った。パサパサの伸びきった髪の毛。
「あいつには程遠いな……」
頭皮を触り、匂いを嗅ぐと臭う。一護は綺麗にしてもらったばかりの風呂場に行き全裸になって上からシャワーを浴びた。
しかしシャンプーは空だった。
「しまった、シャンプーも頼めば……て利用しすぎだろ」
臭う頭皮ではダメだと思いボディシャンプーでとりあえず寧人は全身を洗う。
濡れた髪をタオルで包み、顔の髭も剃る。久しぶりに髭のない顔。
その後体を拭いて髪の毛を乾かしているときに一護が返ってきた。
麻婆丼以外にも荷物を持っていたのを見て寧人は受け取り持っていく。しかし寧人は腰にタオルを巻いただけであり、それが解けて一護の前で寧人はアレを曝け出してしまったのだ。
とても黒々としていて大きい。あれを。
「ああああああっ」
一護はとっさに手で顔を隠した。寧人も荷物で隠して慌てて台所に行き、荷物を置いて下着を履いた。
「ごめん、見るつもりはなかった」
一護は笑ってるが、寧人は顔を真っ赤にしている。
荷物の中には麻婆丼二つ、もう一つの袋にはハサミとコーム、そしてなんとシャンプーとトリートメントの詰め合わせが入っていたのだ。
「さっき掃除していた時になかったから買ってきたんだけど、もう洗っちゃったか。しかもボディソープで洗ったでしょ、あ……ドライヤーある?」
と寧人髪の毛をネネが触る。そして同時にタオルとドライヤーで丁寧に乾かす。
さすが美容師の手つきだと寧人は関心する。いつも理容師による手入れ。
美容院は美容師との会話が嫌だった。理容店ならいつもいくところは会話もなしに黙々と作業してくれて寧人にとっては楽なのである。
「んー、もうついでに切っちゃおうか。ご飯はその後にしよう」
「お腹すいた……」
「ちゃっちゃとするから。新聞紙ひいて、その椅子座って!」
言われるがままのタジタジ寧人は用意をし、椅子に座る。
「じゃあ切りますね、お客様」
一護の微笑みに寧人はどきっとする。電気が走ったかのように。
「……お、お願いします……」
「かしこまりましたっ、お任せあれー」
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