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①
俺は自分の親を覚えていない。
物心ついた時には親はもういなかった。
一番最初の施設では俺と同じようなやつらが沢山いて、毎日走り回った。
馬鹿みたいに疲れるまで仲間と遊んで過ごした。
大人達も俺たちの面倒をよく見てくれ、遊んでくれた。
今となっては懐かしい。
俺はある家に引き取られた。
ここからが地獄の始まりだったんだ。
でも最初は良かった。
食事も与えられ、暖かい寝床もあった。かっこいい服も着させてもらった。
外に遊びに連れって行ってもらって、おもちゃも毎日飽きない程あった。
でも俺が成長するにつれ、俺は邪魔な存在となっていった。
小さい頃は可愛かった、うろちょろするな、食事代がかかる、
思い出すのさえ辛くなるような言葉をかけられた。
そんな日々が続いたあと、俺は捨てられた。
家がなくなった俺は周りの人間により一層疎まれる存在となった。
毎日凍えるような寒さを耐え、人々たちの冷たい目線も慣れた。
たまに子供達が俺のことを見て笑いかけてくれるが、その子供の親たちは近寄っちゃ駄目よと言う。
たまに親切な人が恵んでくれるがそれは一時的なものにすぎない。
まだ小さいのに可哀想という声を掛けてくる人もいるが、
ならあんたが助けてくれ。この地獄から救ってくれ。
なぜ俺には家が、家族が、居場所が無いのだろう。
ゴミ箱から見つけてくる食事の量が段々と足りなくなり、俺は盗みを働いた。
美味しそうな肉の匂い、スーパーの試食コーナーだろうか?
群がるガキ共を押しのけ、肉を取ろうとする。周りが悲鳴を上げる。
俺は捕まった。
俺は殺されることになったらしい。
ただ試食の肉を食おうとしただけなのに。
腹が減ったから食事をする。生物の本能じゃないか。
周りには俺たちの同類がいた。皆捨て子だった。
やがて俺の最期の日となった。
喉が痛くなるほど叫んだ。
誰か助けてくれ。死にたくない。幸せになりたかった。
ガス室へ入れられる。
意識が遠のく。
俺の短い人生は幕を閉じた。
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