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俺は自分の親を覚えていない。 物心ついた時には親はもういなかった。 一番最初の施設では俺と同じようなやつらが沢山いて、毎日走り回った。 馬鹿みたいに疲れるまで仲間と遊んで過ごした。 大人達も俺たちの面倒をよく見てくれ、遊んでくれた。 今となっては懐かしい。 俺はある家に引き取られた。 ここからが地獄の始まりだったんだ。 でも最初は良かった。 食事も与えられ、暖かい寝床もあった。かっこいい服も着させてもらった。 外に遊びに連れって行ってもらって、おもちゃも毎日飽きない程あった。 でも俺が成長するにつれ、俺は邪魔な存在となっていった。 小さい頃は可愛かった、うろちょろするな、食事代がかかる、 思い出すのさえ辛くなるような言葉をかけられた。 そんな日々が続いたあと、俺は捨てられた。 家がなくなった俺は周りの人間により一層疎まれる存在となった。 毎日凍えるような寒さを耐え、人々たちの冷たい目線も慣れた。 たまに子供達が俺のことを見て笑いかけてくれるが、その子供の親たちは近寄っちゃ駄目よと言う。 たまに親切な人が恵んでくれるがそれは一時的なものにすぎない。 まだ小さいのに可哀想という声を掛けてくる人もいるが、 ならあんたが助けてくれ。この地獄から救ってくれ。 なぜ俺には家が、家族が、居場所が無いのだろう。 ゴミ箱から見つけてくる食事の量が段々と足りなくなり、俺は盗みを働いた。 美味しそうな肉の匂い、スーパーの試食コーナーだろうか? 群がるガキ共を押しのけ、肉を取ろうとする。周りが悲鳴を上げる。 俺は捕まった。 俺は殺されることになったらしい。 ただ試食の肉を食おうとしただけなのに。 腹が減ったから食事をする。生物の本能じゃないか。 周りには俺たちの同類がいた。皆捨て子だった。 やがて俺の最期の日となった。 喉が痛くなるほど叫んだ。 誰か助けてくれ。死にたくない。幸せになりたかった。 ガス室へ入れられる。 意識が遠のく。 俺の短い人生は幕を閉じた。
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