光る月に手を伸ばし

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 帰り際、貰った花束と荷物を手にあの場所へと向かう。  美術部が行っている卒業制作の展示は、毎年冬休みに地元の文化会館で開催しているのだと彼女が教えてくれた。  本当はもう終わっていたそのモデルを頼まれ、二人最後の思い出みたいに同じ時間を過ごした美術室の扉を引く。  中には誰もおらず、ただ部屋の片隅にいつも濱田が使っていたイーゼルが置かれていた。  そこに立てかけられたままのキャンバス。    卒業式の日まで楽しみにしといてよと言って笑ったあいつ。  どんな想いで俺の背中を見つめ、  どんな想いをここに描いたのだろう……。  トクントクンと耳まで届く心臓の音を聞きながら置かれたキャンバスを覗き込んだ時、抱えていた花束が手元から滑り床に落ちた。  そこには――。  …………何も描かれていなかった。
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