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はじめての発動
★
記憶の中にある、過去に戻る呪術。私ははじめて、それを使ったのだ。
世界が歪み、意識がねじ曲げられる。時間と空間のはざまに自分自身のが引きずり込まれるような感覚に陥る。
気づいたとき、私は車の後部座席に横たわっていた。車は路上に停められており、前の座席にはふたりの若者の姿がある。
左側の助手席には浜崎が、右側の運転席には丸山がいた。まさに浜崎がナイフを振り上げたところだった。丸山は浜崎の顕現と殺意に驚いたのだろう、身をこわばらせ、ドアにへばりついて距離を置く。しかし丸山に逃げ場はない。
浜崎の頬を涙が滑る。彼は小声でぼそりと、丸山に向かって呟いた。
それはまさにドライブレコーダーの映像を反対側から見た光景だ。私は即座に声を張り上げる。
「やめろ!」
浜崎は驚いて振り向き目を丸くした。振り下ろす手はぴたりと止められている。
私は手中にあったガベルで浜崎の右手を打ち付ける。鈍い音がして悲鳴があがり、ぼろりとナイフが落ちた。すかさず奪い取る。
苦悶の表情でうずくまる浜崎をよそに、怯える丸山の胸ぐらを掴む。
「浜崎はお前の罪を消すために、自ら罪を背負う覚悟をしたんだ!」
思わず声が震える。それ以上言葉が続かなかった。ただ、浜崎のような未来ある若者に罪を着せてはならない。
ガベルを振りかざし、丸山の脳天に照準を絞る。
「やめて!」
助手席の浜崎は私の振り上げた腕にしがみつき必死で叫ぶ。
「幸一を止めるのは僕の責任だ!」
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