開廷

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実のところ、彼が犯人と考え難い理由も揃っているのだ。浜崎の弁護人がすかさず割って入る。 「しかし、被害者は殺害される直前に無免許運転で、それも学校に向かって車を走らせていたわけですね、何のために?」 「目的は分かりませんが、おそらく卒業式の風景を目に焼き付けようとしたのではないかと検察側は考えています」 検察官と弁護士の応酬が始まる。浜崎の弁護人はまだ若い男で、実力は未知数だが熱意は感じられた。 「では検察官に尋ねますが、被告人はどうやって自宅の車の中に潜入したんですか」 「被告人は何らかの方法で車のスペアキーを手に入れ、被害者の車に潜んだのでしょう」 「けれど、それでは卒業式の直後に殺害を実行するなど不可能です。浜崎は卒業式に。そうですよね?」 えっ、と驚きの声が傍聴席から漏れる。検察官はためらいながらも答える。 「……はい、同級生の証言がありました。それも複数です」 「では、検察は凶器を見つけたのですか?」 「車の中にサバイバルナイフが残されていましたが、使用した形跡はありませんでした。鑑識にかけましたが血液反応はありませんでした」 「使われていないナイフがなぜそこにあったのですか?」 「わかりません。わかっているのはナイフがあったということと、購入者は被害者の丸山、そして付着した指紋も丸山のものだという事実だけです」 法廷のざわつきがひどくなったので、静粛にと皆に指示をした。落ち着いたところで再開を促す。 「では被告人は丸山幸一が学校に来ることをどうやって知ったのでしょうか。電話などの通信記録はありましたか」 「いえ……、プロバイダーに問い合わせましたが、事件の数日前から連絡を取り合っていないようでした」 弁護人はここぞとばかりにたたみ掛ける。
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