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「犯行は日中に行われました。犯人は返り血を浴びているはずですが、目撃者はいたのでしょうか」
「いえ、浜崎らしい人物の目撃情報はありませんでした」
「それでは被告人はどうやって友人の意思を知り、どのように被害者に接触し、どのように立ち去ったのでしょうか。――それらについても、検察は本人に尋問したのではないですか?」
「はい、しかし尋問に対して被告人は黙秘を続けました。けれど、ドライブレコーダーの映像は動かぬ証拠と検察側は考えています」
真相を知るはずの浜崎は、無表情で弁護人と検察官のやり取りを聞いているだけだ。私は浜崎に尋ねる。
「では、被告人にお尋ねします。なぜ黙秘を続けているのですか」
すると浜崎は淡々とした口調で答える。
「話しても理解してもらえないと思ったからです。たとえば事件が起きた日、僕は卒業式に出席し、後日に幸一を殺したといったら、皆は信じてくれますか」
理解に苦しむ証言に、検察官も弁護人も困惑の色を濃くするばかりだ。
けれど私だけはその意図を理解していた。彼は私と同じ運命をたどり、同じ能力を宿した人間に違いないからだ。
浜崎の目を正視して尋ねる。
「それでは、君がはじめてその能力を使うに至った経緯を教えてください」
私の問いかけはすぐさま浜崎の表情を一変させた。やはりな、と確信めいたものがあった。彼の震えた唇が、胸に秘めた呵責の念を解き放つ。
「裁判長、あなたもなんですね……」
私は黙ってうなずく。私の意図は、きっと彼に伝わっている。
すると彼はついに、丸山幸一殺害の経緯について話し始めた――。
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