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浜崎雄太の告白(2)
★
幸一はスマホを自宅に置いたまま家を出ました。手にしていたものは車の鍵とサバイバルナイフだけです。もちろん、彼は車の免許など所有していませんでした。
けれど、そんなことはどうでもよかったはずです。なぜなら、幸一は無免許運転なんかよりも、ずっと重い罪を犯すつもりだったのですから。
彼の目的は、学校を墓場にすることでした。最悪な狂気にとらわれ、華々しい卒業の舞台を血で染めようと考えてしまったのです。
そして幸一は車に乗り込むと一心不乱に高校を目指しました。高校の手前で停車し、門が開くのを待っていたようです。
その時が訪れました。幸一は開門を見計らい一気にアクセルを踏みます。それも力の限り踏み込んだようです。
車は加速し構内に突っ込んでいきます。何人もの生徒が、まるでおもちゃを払いのけるかのように車にはねられました。
悲鳴と助けを求める声が校庭に響き渡ります。
幸一はぶつかり変形した車を停めて校庭に降り立ちました。その手にはサバイバルナイフが握られています。
彼は焦点の定まらない目で辺りを見回します。一瞬、僕と目があったのですが、幸一の目に僕は映っていなかったようです。
その反応に、僕は結局、彼を止めることができなかったのだと悟りました。
生徒たちは逃げ出しましたが、なかには恐怖のあまり足がすくんでしまった生徒もいます。
幸一はその生徒に狙いを定めると、無表情のまま襲いかかりました。
そして校庭は凄惨な血の海と化してしまったのです。
到着した警察たちが幸一を力ずくで押さえつけ、ようやっと収拾がつきました。
とはいえ、多数の死者と負傷者を出したこの事件は、それで終わりではありません。
世間の非難の的になったのは、幸一を育てた両親でした。悪魔を生んだ親だと蔑まれ、連日、石を投げられ罵声を浴びせられました。家は放火に遭い焼けてしまいました。
ふたりはテレビの前で地面に頭を擦り付け、泣きながら謝りました。けれど、それで許されるはずもありません。
そんな幸一のお父さんとお母さんがとるべき道は、ひとつしかありませんでした。そう、自ら命を絶ったのです。
拘留中の幸一は、訃報を聞いて事態の大きさを認識したようです。それ以来、頭を独房の壁に打ち付けて頭と目から血を流し、そしてついに果てました。
この事件、何が残ったのでしょうか?
それは――幸一を止めることができなかった、僕自身の後悔です。
だから僕は、生まれつき備わっていた能力を解放して、幸一を殺すために過去に戻ったのです。
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