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「あれ撃たれたら、竜が怒って向かってくるか、回避行動でどこか遠くへ逃げるかですよね!?」
つい非難がましく声を上げたところで、「いいえ」とリクハルドがすかさず答えた。
「見えますか。あの雲の向こうに、隣国の飛空艇も出張ってきています。射線を考えるに、竜にあたらなかった場合はあちらに撃ち込むことになるでしょう。にらみ合いの緊張状態の中、こちらの国の王太子の船から先制攻撃――最悪」
「止めないと……!!」
助けにならないどころか、はっきりと足を引っ張られている。状況が見えている以上、アッカとしては最悪を回避せねばと判断しかけたが。
リクハルドは、眼鏡をシャツの胸ポケットにしまい、自分もまた首にかけていたゴーグルを顔に上げて、毅然として言った。
「アッカさんは竜に集中してください」
「リクハルドさんはいつもみたいに下がっていてください。本格的に戦闘がはじまりますよ!」
非戦闘員であるリクハルドは、普段はこういった場には参加しないのだ。ごく稀にアッカの横で助言することはあるが、本人が武器を手にすることはない。
心配から言ったものの、リクハルドには「いいえ」と却下された。
リクハルドは、アッカではなく遠くを見て口を開く。
「さきほどの話で、故意に言いそびれたことがあるんですが――、俺にも一応得意分野はあるんです。若い頃飛空艇に乗っていたことがあるので、いざとなれば戦闘での立ち回りもできないわけじゃないんですよ。だから俺のことは心配しないで。アッカさんは、竜を撃つんです」
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