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「やった……」
竜が雲間に落ちていく。
瞬間的に魔法を使いすぎて立ちくらみを起こしたアッカを、横に立ったリクハルドが抱きかかえるように支えた。
その目の前で、オスカルの船から火器が火を噴き、いくつかの弾が隣国の飛空艇に着弾する様が見えた。幸い、大きなダメージには見えなかったが、止められなかったことに船員たちから落胆の声が上がる。
「ええ……え。それはあんまりでは」
アッカも力なく呟いた。手足に力が入らず、リクハルドの胸に思わず縋るような体勢になる。そのアッカを軽く抱き上げて、リクハルドは「大丈夫だよ」と再び囁いた。
そのまま背後を振り返り、船員たちに声を張り上げて指示を出した。
「あの旗なしの船に突っ込む。舳先で叩いて弾く。あたりどころが悪ければ向こうは落ちるだろうが、そのときは仕方ない」
「しかしあの船は……!!」
ぎょっとしたように言い返されたリクハルドは、不敵な笑みを浮かべた。
「国王陛下の命を受けて竜討伐にあたったアルマリネが、ついでに船籍不明の空賊を叩くだけだ。間違えてもあれがこの国の関係者だと、隣の国に知られるわけにはいかない。それくらいだったら、落としてしまった方がマシだ。行くぞ」
操縦者に旋回を指示して、アッカを抱えたままリクハルドは舳先に立つ。
そこは危ないですよ、という声を聞き流しながら、アルマリネが方向転換をするのを待ち、カウントをする。
そして、向かってくるアルマリネを前に、甲板で目をむいているオスカルを見つめて、にっと口の端を吊り上げて笑いながら叫んだ。
「いまだ。突っ込めーーーーーーーーーーー!!」
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