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子狸プーロ
「あのね。僕、狸のプーロ。この町の先にある林に住んでいるの。今日は代書屋さんにね、お手紙を書いて欲しくてきたの」
プーロはクッキーを頬張りながら言った。
椅子に座ったはいいものの怯えて満足にしゃべれなかったプーロに、軽食用にとっていたクッキーを試しに渡すとすっかり警戒を解いた。
今も口周りと床に屑をこぼしながら一生懸命かじっている。
(こんなに無防備で野生でやっていけてるのかしら)
アザミは自分用に入れた紅茶を飲み、呆れた眼差しで観察する。
「手紙って誰に出すのよ」
アザミの問いかけにプーロは口の中のクッキーを飲み込んで答えた。
「僕の大好きな人!」
「人の知り合いがいるの?」
プーロは大きく頷いた。
「僕、少し前に鷲におそわれたの。その時にねいっぱい怪我をしたの。痛くて痛くてもう死んじゃうのかなって思った時に、助けてもらったんだ。だからありがとうって伝えたいの!」
素晴らしい思い出のように語っているがなかなかに壮絶だ。そしてやっぱり、死にかけていた。
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