お肉、なに入れる?

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 それから一行は合成魔獣(キュマイラ)を倒して倒して倒して倒しまくった。  こんなに合成魔獣(キュマイラ)ばかり出てくるなど常軌を逸するにもほどがあるが、同時にガロールの言っていた「弱い」という事実をアズミも理解し始める。  本来あるべき合成魔獣(キュマイラ)は魔法生物と呼ぶに相応しい強化を施された存在だ。炎や酸を吐くなどは定番、高い知能を持ち魔術を操る個体の存在も確認されている。  しかしこの迷宮には魔術どころか炎や酸を吐くものすらまだ一匹も遭遇していない。精々が大きいだけ。 「あーこれ、いや、せやけど……うーん、そんなアホなやつおらんやろー……」  なにか察した顔でアズミが零す。 「なにかわかったのか?」  ラムザの問いに彼女は半笑いを浮かべた。 「いやまあまだ想像の範囲っちゅうか、とりあえず、今はまだ語るべきときとはちゃうんや。居住区か書斎でもありゃ断言出来そうなんやけどなあ」 「そりゃ奇遇だね。ご希望の部屋がありそうだよ」  ルピナスの指さした先にある扉は他のものに比べてずいぶんと小さい。標準的な人間サイズを想定した扉だ。つまりその先は合成魔獣(キュマイラ)の出入りを想定していない部屋、もしくは区域ということになる。 「俺は中に入っても役には立てんだろうから外で見張りをしていよう。ちょうど小腹が空いてきたところだ」  扉を通るのに手間取りそうなガロールはあっさりそういうとバックパックを下ろして中身の物色を始める。 「自分めっちゃ食うやん。そのバックパック全部食いもんなんちゃうやろな」  からかい気味に発せられたアズミの言葉に至極当然のように「だいたいそうだな」と答えて彼女を真顔にさせると、ひとの腕よりはありそうな大きなパンを丸ごと取り出してちぎっては齧りだす。 「まあなにが起こるともしれん。外にもひとり残ったほうがいいだろう」  ラムザが彼に賛成し、三人が中の部屋へ入ることになった。  中は古びたソファーや書斎机、壁面は梯子を必要とするほど大きな本棚が並んでいる。奥にも扉があってまだ先が続いているようだ。 「こらあちいとかかりそうやな。奥は任せてアタシはここの調べもんさせてもらってええやろか」 「それじゃ私はそのあいだに奥を見てこようかね。ラムザはどうする?」 「俺はルピナスについていこう。アズミはなにかあれば大声で知らせればいいだろう」 「わかったで。まあさすがにこの部屋で事件は起こらんと思うけどな」  各々行動を決めると、アズミは早速本棚に目を通し始める。まずは本のタイトル、ぱっとわからないものはパラパラと開いて傾向だけ把握しておく。この部屋の雰囲気、間違いなく魔術士の書斎だ。研究内容についてはざっと蔵書を把握してからのほうが仕事が早い。
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