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かくして全ての肉を投入された一品【合成魔獣の肉だけカレー】は出来上がった。
ガロールが持ち歩いていたパンを切って炙り、カレーをそれぞれの皿に取り分ける。
「ちゅーかその巨大な鍋はどっから出てきたんや?」
球体から切り出したような底の丸い大鍋は、それこそ人間を丸ごと入れられるような大きさだ。
「俺のバックパックの中だ」
「こんなもん持ち歩いとるんかい」
「騎士の嗜みだからな」
「さすがに絶対ちゃうやろ。まあええけど。ほないただきまーすっ!」
広いとはいえ長く地下に潜り続けた解放感と丸一日以上ぶりの温かい食事、それもカレーの香りとあっては空腹も限界だった。思い思いの方法でしかし揃ってカレーを頬張る。
「うむ」
ガロールが満足げに頷き。
「おお」
ラムザが感嘆し。
「これは」
ルピナスが目を見張り。
「うーまーいーでー!!」
アズミが叫んだ。
「なんや肉だけのカレーってぶっちゃけ正気疑っとったけど、いやほんま美味いなー」
「さすがに野菜の手持ちは無いからな。だが肉はいくらでもある。ならば肉だ。野菜があれば野菜を入れ、肉があれば肉を入れる。一期一会の旨味こそが野営で作るカレーの醍醐味よ」
「上手いこと言いよってこの。しかし食感も上手くバラけとるゆーかそれぞれの切り方絶妙やな」
既に一皿平らげ二皿目に入っているラムザが「それは俺の判断で指導して細かい仕事はルピナスに任せた」と口を挟んだ。
「私たちは料理人ってわけじゃないからねえ。その点良い肉食ってるお偉いさんは詳しいよ」
けらけらと応じるルピナス。
「ちゅうか……大司教今回それしかやっとらんのっちゃうか?」
実際ラムザは迷宮内で本当にほとんどなにもしなかった。それこそただひとり戦闘にも一切加わっていない。
訝しげに呟くアズミにしかし彼は自信満々に答える。
「なにを言う、お前たちをここへ導いただろうが」
「導いたて……」
「未盗掘迷宮探索に一流の探掘屋と一騎当千の騎士を雇い、苦学生に知恵者として才能を発揮する機会を与えた。各々が十全に本分を果たし大きな事故もなく目的を達し、笑顔で美味い飯を囲んですらいるではないか。全ては女神の思し召しであり、俺の成し遂げた成果だ。違うか?」
「ほんま自己肯定感半端ないな。エグいわ」
かなり引き気味のアズミを宥めるようにルピナスが笑う。
「ははは、こいつはいっつもこうだよ。偉そうに言うばっかりで滅多なことじゃなんにもしない。それでもこいつとやる仕事はデカいヤマでも不思議と上手く行くんだよねえ」
そう聞けばあながち悪い縁というわけでもない気がする。
「ほーん。じゃあアタシもまたその恩恵に預かれるんやろか」
下心たっぷりの彼女の言葉に、ラムザは鷹揚に頷いた。
「女神の思し召しのままだ。有り難いと思うなら教会に喜捨のひとつもしておくがいい」
「金無いゆーとるやろがい!!」
かくして最後に限界まで【合成魔獣の肉だけカレー】を堪能して、この冒険は幕を閉じた。
その後無事復学したアズミは通りすがりに教会へ手持ちの小銭を喜捨したそうだが、また大司教と縁があったかは定かではない。
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