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暫しの探索を経て部屋から出た三人。
「おう、中はどうだった。外は異常ないぞ」
ガロールの荷物が結構減っていることに誰もが気付いたが敢えて口にはしない。
「書斎の奥は普通に生活空間だよ。寝室や水路もあって長期間引きこもる想定の設備だった。まあだいたい駄目になってたけどね」
「使われんくなって長いんやな」
「そういうこと。金目のものは二百年以上前に流通してた古い金貨がそこそこの量あったからそれだけ頂いてきたよ。あとで山分けしよう」
「よっしゃ、臨時収入ありがたいわ」
ぐっと拳を握って笑みを浮かべるアズミ。忘れちゃいけない苦学生である。
「アズミのほうはどうだ? なにか思うところがあったようだが」
ラムザにしてみればこの迷宮の危険度確認こそが本分だ。魔術士がどのような目的でここを作り、どんな研究をしていたのかが最も重要だった。
「ああー、うん、それなんやけどなあ……」
アズミは言いにくそうに少し言い淀んでから、ルピナスに視線を向けた。
「もしかしてここの扉って鍵は掛かっとっても罠は無かったんちゃう?」
「そうだねえ……今のところ罠はひとつも無いよ。なんでだい?」
「ここなー、兵器としての合成魔獣研究しとったわけっちゃうねんなあ。実は迷宮やあらへん。地下にあるっちゅうだけで当時の領主も公認しとった施設なんや」
「ふむ?」
ラムザが首を傾げ、ガロールとルピナスも顔を見合わせる。
「大した戦闘力も持たされとらんどころかそもそも強くしようと試みた様子もあらへん。その割にサイズだけはデカいときとる。なんでやと思う?」
確かに山羊や豚、鶏など魔獣の素材として適しているとはお世辞にも言い難い動物もそのまま使われている。部位も様々でしかし大きさだけは元になった動物以上のものが多い。
「わかったぞ。食うためだな」
真顔で答えたガロールにラムザとルピナスが冷ややかな視線を向けたが、問いを発したアズミはその答えに大きく頷いた。
「信じられんけどその通りなんやなーこれが」
「ほう、なんと」
「いやいや冗談だろう?」
「研究記録も残っとるし蔵書の傾向からも間違いあらへんで。ここは邪悪な魔術士が私利私欲の為に作った戦力の研究施設やない。二百年前に統治しとった領が滅んだときになんやふわっと忘れ去られた、家畜の品種改良施設やったんやーっ!」
気まずい静寂が一帯を支配した。
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