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告白という喜ばしき一大イベントを素直に喜べないでいるのは、俺がコミュ障だからでも、テンパっているからでも、ましてや照れているからでもない。
それは何を隠そう、告白をしてきた相手があまりにも想定外だったからだ。
事の経緯は今から数時間前に遡る───
.....
「羽柴...」
「え、なに。」
妙に聞き慣れた声で、言われ慣れない俺の名前が呼ばれる。
振り返ってみれば、そこには普段あまり絡みのない染谷が突っ立っていた。
染谷は俺と違ってクラスの中心的な存在で、直接話すことがなくても彼らの賑やかな会話は耳に入ってくることは多い。
いつの間にか聞き慣れたその少し低めのハスキーボイスも、今日は何故だが震えている気がして、俺は彼に何かしてしまっただろうかと内心焦った。
「...」
「え、まじでなに。どうしたの」
「...」
「えっと...染谷くん?」
俺の名前を口にしてから一向に話し出す気配もなく、視線も合うことはない。
これはまじで何かやらかしてしまったのかもしれない。
俺の中の彼のイメージは、誰とでもすぐに打ち解けられるコミュニケーション能力と端正な見た目を持ち合わせた典型的な陽キャだ。
しかしそれも今は見る影もなく、俺は不安になりながら周囲を見回した。
いつも染谷が連んでいる友人達は何故か俺達のことをにやにやとした笑みを浮かべながら遠巻きに見ている。
「...あのさ、羽柴」
そんなことを考えていれば染谷はやっと話す気になったのか再び俺の名前を口にする。
その声はやはり震えていて、得体の知れぬ不安に俺は息を飲んだ。
「...うん」
「今日の放課後、体育館裏来てくれないかな」
「は?...体育館裏?」
何で?俺リンチでもされんの?
体育館裏なんて漫画やアニメの世界ではリンチの定番だ。
俺は知らぬ間に奴らに目を付けられてしまったらしい。
染谷がそう言えば後ろで俺たちの様子を窺っていた友人達の笑みがより一層深まる。
彼らがそんなふうに笑うのが何よりの証拠だ。
「...とにかく、来て。お願い」
「えっと、うん。...わかった」
何故かものすごく必死な表情で「お願い」なんて言葉を使われて、俺は断ることもなく無意識のうちに頷いてしまっていた。
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