渚の街のモノクローム外伝「レイラアナザーストーリー」⓶

１．レイラの引っ越し

　アパートは2階建てで、全部で６世帯が入る、小ぢんまりとしたものだった。

　外壁を見ると、何度か塗り直したのか、塗料の剥げかけた上にさらに塗ったような跡が見える。暗かったので遠目で見たら目立たなかったが、近くまで来て街灯に照らされたアパートは、おせじにもキレイとは言えなかった。

　レイラの部屋は2階の真ん中で、中に入ると8畳くらいのワンルームとなっている。玄関側が南に面しているため、ベランダと掃き出し窓は北になる。部屋の灯りを付けても、かなりうす暗かった。

　アリスはこういう部屋を見るのが初めてだったので、
「え…。レイラ、ここに住んでるの？」
と驚いた様子でレイラに聞いた。

「ウン、まぁここは、ほぼ寝るだけだからね。問題ないよ」

　アリスは、（自分はなんて恵まれてるんだろう…）と思うと、急に涙がポロポロ落ちだし止めることができず、その場にペタンと座り込んで泣き出してしまった…。