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結局、レイラのアパートまでアリスの母のレイに車で迎えに来てもらった。
帰りの車の中でアリスは、
「ママ、私は恵まれ過ぎてるよね…」
と話し出した。レイは、
「そうねえ、アリスはまだ苦労をしたこと、ないもんね」
「私、今日レイラの住んでるとこ見てさあ、ショックを受けたよ…」
「アラアラ、ここはまだいい方よ?田舎の農家なんかひどいものよ?」
「え?そうなの?ママ?」
「ウン、私がパパと知り合った海の街ではみんな貧乏でね、それはひどいものだったわ…」
レイはそう言って10年以上前の海の街に想いをはせた。
「私が海の街に住んでいた時もね、二十歳のころだったけど、それはひどいボロアパートだったのよ?そこにパパが通ってきてね…」
その時、
「ママ!前!前!」
とアリスが叫んだ!
レイは、
「キャー!」
と言って急ブレーキをかけた。信号待ちの車に危なく追突するギリギリで止まった…。
「もう、ママ、ちゃんと前を見ててね!」
アリスがそう言って注意したとき、アリスの脳裏にいい考えが降ってきた。
「あ!そうだ!いい考えがある!」
「どうしたの?アリス?急に…」
「うん、えっとね、うちの家、汐音さんがいた部屋がまだ空きのままでしょ?あそこにレイラを入れてあげられないかなあ…」
「そんなに簡単に言うもんじゃないわ、アリス」
「だって全国1位のレイラがさ、あんなとこに住んでたら、腕も落ちちゃうよ。私はレイラには万全の状態で試合をしてもらいたいの。お願い、ママ」
「う~ん…。屋敷のことはママやパパが決められないから、帰ってももっちさんに相談してみないことには…」
と、少し困り顔になり、
「でも先にパパに話してみましょうね」
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