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「これ、お前が?」
そう問いかけるとタケオはこくりと頷いた。
彼がスマホで見せてきた動画には、今まさに立っている田舎道を背景に、得体の知れない節足動物に恐れおののき時折「うわぁ!」「来るなよ!」なんて悲鳴をあげるタケオの声が流れている。
「よくできてるなぁ」
最近CGの制作を始めたというタケオの上達ぶりは目に見えて凄い。
この、CGで作られただろう節足動物も、その些か艶消しされたような色調や鋭い針を蠢かすぞろぞろとした動きは、架空の産物だとしても現実に居てもおかしくないだろうと思った。
「違う……」
ぽつりとタケオが呟いたから俺は徐に目線を上げた。
「その映像は、そのスマホで撮ったままの動画だ」
「……え」
タケオはいつの間にか冷や汗をかいていた。
そしてその身を震わして、段々と身を縮こませていった。
相反して空いた空間に何かが揺らいでいる――。
彼の輪郭をなぞるように揺らいでいたのは、ぞろぞろと蠢く影だった。
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