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 スペシャルアンバサダーとしての私がなにか特別なことをしたかというと答えはNOだ。なんもしてない。ねこふんじゃったを歌いながら自転車にのって学校へ通い、ときどきペットショップを覗いて『ぬこ』を確認する。そしてひがみ女店員から苦笑いされる。 『ぬこ』は市民権を獲得するには至らないが少しずつ人類に広まっている。便宜上これを「ぬこ黎明期」と私は呼ぶが、やがて『ねこ』へと繋がる「ぬこ過渡期」が訪れるかどうか、腦みそが溶けていてわからない。 『ぬこ』の販売は全店好調で『ぬこ』発祥の地であるここの店長である安西先生は栄転し、マッチョな彼があとを継ぎ、私はマッチョな彼とお付き合いするようになった。  マッチョな彼はあの上腕二頭筋で千切れるくらい締めあげてくれる、否、抱き締めてくれる。「あんた本格的にそっちの人なんだね」と友だちは言うが、そっちとはどっちだ。遠くを見る目で私を見るな。「姉ちゃんデートでランチするときは忘れずにヘルメット外したほうがいいよ」と忠告する妹よ、おまえこそヘルメットを着けろ。ノーヘルはリスクが高いぞ。  ともかく『猫』は腦みそが溶けている私だけの妄想であるとみなして生きていくが、ひょっとするとあるいは私いがい腦みそ溶けている可能性もなきにしもあらずで、みんなで腦みそ溶かしちゃってるかもしれない世界って、なんかちょっと好きっす。
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