雪のような人

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「何部ですか?」 「バスケ部」 「練習は一日何時間くらいやるのですか?」 「二時間くらい?」  完全に彼に会話をリードされているのが悔しくて、わざと一言だけで返してやった。でも。 「部活は楽しいですか?」  そう聞かれたとき、思わず頬が緩んでしまった。汗と熱気でいっぱいの体育館の匂いと温度、そしてキュッキュッという靴音を思い出したから。 「うん。特にシュートが決まった時は最高!」  声が弾んでいるのが自分でも分かった。恥ずかしい。彼が微笑みを浮かべた。 「では、プレイ中に『このシュート、将来役に立つのかなぁ』って思ったことありますか?」 「そんなの、あるはずないじゃん!」  食い気味で答えると、彼が唇をさらに弓なりにした。 「将来役に立たないかもしれない勉強はしたくないのに、将来役に立たないかもしれないシュートは打ち続けられるんですか?」 「……は?」 「君は、勉強をしなくていい理由がほしいだけです」  はめられた、と思った。俺は世間話をしているつもりだったが、彼はお説教の材料を集めていただけだったのだ。俺の熱が急激に冷めていった。彼は俺の変化に気がつかない様子で、滔々(とうとう)と語り出した。
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