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「本当に夢中になっていることに関しては、『役に立つかどうか』なんて考えもしないんです。そんなこと関係なくやってしまうんです。だから、『この勉強が役に立つのか』と聞いてくる人は、答えがほしいんじゃない。勉強をしていない自分を正当化するための理由がほしいだけなんです。仮に、僕が理路整然と『こういう理由で勉強はした方がいいですよ』と説けたとして、君は『じゃあやろう!』と思えますか?」
「そりゃあ、まあ、思えないけど……」
唇を尖らせ、拗ねたような声を出してしまったが、彼の表情は変わらない。人差し指で眼鏡を上げながら続けた。
「だから、将来役に立つか立たないかなんて、どうでもいいことを考えてる暇があったら、英単語の一つや二つを覚えた方が有意義です」
会うのは二回目、かつ、未だ何も指導してくれていない彼が先生然としているのが気に食わなくて、俺は問題集と彼から顔を背けた。自分の指を見つめ、いじわるを言いたくもなる。
「じゃあ、こうやって俺に偉そうに説教してくる先生は、『これって将来役に立つのかな』なんて、一回も考えたことないんだよね?」
沈黙。「ありません」と即答されるとばかり思っていたのに、肩透かしを食らった気分だ。
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