犬と猫

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 作ったというからには、パソコンを使って先生が打ち込んだものなのだろう。数字や英単語の文字幅は狭すぎず広すぎず、読みやすい。また、改行やインデントなどがずれている箇所もない。丁寧で、きっちりとしたプリントだ。先生の性格が少しだけ分かったような気がした。  ――でも、これって、紙とかインクとかどうしてるんだろう。中一の問題集は市販のものだったし。  疑問がわいてきて、先生に尋ねる。 「そういえば、問題集を買ったり、印刷したりするお金ってどうしてるの?」 「田丸さんからいただいた二万円でやりくりしてますよ」  先生は何でもないことのように言う。 「テキスト代込みでその値段なの?」 「はい。田丸さんから別途いただきそうになりましたが、断りました」 「それって、ほとんどボランティアじゃん!」 「いいんですよ。指導の勉強にもなりますし」  そうだとしても、対価がなくてやっていけるものだろうか。俺だったら絶対むりだ。労力に見合わない給料では、やる気になれない。 「先生はなんでこんなに、俺に親身になってくれるの?」 「実は、僕の実家で犬を飼っています」  突然何の話が始まったのだろうと思った。 「十二歳のメスのゴールデンレトリバーです。名前は『みやこ』というんですけど――」  先生はそこで言葉を止めて、俺をじっと見つめてくる。 「君はみやこに似ています。だからでしょうか、ちゃんと僕がお世話してあげないと、という気持ちになります」 「お世話って……。すごく複雑な気持ちなんですけど」  口を尖らせると、先生が笑った。  会話の予測ができないから、先生と話しているとペースが乱れる。でもなぜか、その乱れが心地よいと思ってしまう。もっと乱されてみたいと思ってしまう。
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