番外編 君はチョコレートみたいに

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 彼女が本気でアプローチをかければ、悠里は彼女とくっついてしまう気がした。僕と違って付き合いも長いし、何より悠里の恋愛対象である「女性」だ。  大量のお菓子と、気遣いのポテトチップス。「しょっぱいもの最高」「一人じゃ食べきれないんだ」という悠里の声。全てに動揺して、嫉妬して、悠里にあげようと思っていたチョコレートも、「いつも忙しい時間帯にお邪魔してしまっているお詫びの品」と偽って、田丸さんに渡してしまった。  そんなことを言えるわけもなく、僕は黙って、悠里からもらった箱の包み紙をはがし、ふたを開けた。トリュフチョコが六つ入っていた。 「バレンタインチョコって言っても、二月に買ったわけじゃなくて、この前買ったやつだから安心して! 先生、去年はお世話になりました、これからもよろしくね、っていうアレです」  へへ、と悠里が頭をかいた。  ――僕はいつまでも悠里の「先生」なのだろうか。この距離を保ったまま、悠里との関係性は変わらないのだろうか。  ――はは。悠里がうちに来る前は、今のままの関係をずるずると続けたいって思ってたくせに。矛盾してる。
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