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「ありがとう。お金は来週一括でお支払いするわ」
「私の仕事ぶりを見てからではなくて良いのですか?」
「少額で申し訳ないから、せめて前払いにさせて。私の仕事はシフト制だから、日によって家にいたりいなかったりするけど、気にしないでね」
「かしこまりました」
「それと、最後の『連絡は叔母を通じて』っていうのは、何かあった時は、私が美奈子さんに連絡して、そこから健人くんに連絡がいくってこと?」
母さんが首を傾げる。
「そうです。逆に私から連絡がある場合は、叔母にことづけます」
「どうしてそんな面倒なことを? 悠里と直接やりとりすればいいじゃない」
「叔母が『生徒と連絡先を交換しない方がいい』と言うもので。情報流出など、何が起こるか分からない世の中だから、とのことでした。もちろん叔母は私を信用してくれていますし、私も息子さんの連絡先を悪用するつもりなどございませんが、念には念を入れて、大人を通じて連絡させていただけた方が良いかと思います。お母様にお手数をおかけすることになってしまいますが、その方が安心していただけると判断してのご提案です」
「そこまで考えてくれてたの。……そうね、何かが起こってからでは遅いものね。分かったわ。この条件でお願い」
母さんに「かしこまりました」と頷いた彼は、その流れで俺に視線を向けてきた。
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