やがて朝は訪れる

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 ・ 「えー、この前から話している鳥の死骸の件、まだ解決していないので、みなさん死骸を見つけたり怪しい人物を見かけたりしたらすぐに警察へ通報するか学校に相談するように」 朝から話すには不釣り合いな内容を教壇から淡々と話す担任。もう何度めかの出来事にも関わらずどこか他人事で。そういえば以前動物を飼ったことがないのに生物委員の担当になってしまったと嘆いていたなことを思い出した。 ここ3か月、この小さな田舎町では鳥の死骸が多く発見されている。 「鳥の死体さー、羽毟り取られてたり肩から切られてたりするらしいよー」 「ミナ、死骸ね、シ・ガ・イ」 「シガイかー」 だから怪しい人物がいたら通報しろ、なんて話しになっているのか。 キモチワルッとわざとらしく身体を震わせるみんなの声をただ聞きながら静かに体操着に着替えていると、ミナが明るい声のまま「もしかして如月なんじゃない?」とつぶやいた。 「……何が?」 思いがけず会話に入ってしまった。今朝の話を聞いて五月蝿くなった教室の中で、眉ひとつ動かさず、口も一文字に結びつづけていたクールな横顔をふと思い出した。 「だからー、犯人だってばー。キモチワルイヤツはキモチワルイコトするんだよきっとー」 クラスメイトの如月 初雪(きさらぎ はつゆき)。 異彩を放ちクラスでも浮いた存在であるそのひとは、何かとうわさの対象にされている。 まるでおもちゃみたいだなあと、思わず笑ってしまう。 根拠のないうわさを立てる人たちもどうかと思うけれど、うわさを立てられる側も多かれ少なかれ落ち度はあるとわたしは思っていて、それは惨めだと感じるから、 だから、わたしは、絶対にそちら側には行かない。
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