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『お姉ちゃん、今までごめんね……もうお母さんから電話がかからないようにするから……だから、私の分も今を楽しんで……』
「亜紀! ごめんね! いつもあんたに背中を押してもらって、不甲斐ないお姉ちゃんで!」
『そんなことないよ……大好きだったから、お姉ちゃんには……自由に生きて欲しい……』
「亜紀……」
『じゃあね……』
「亜紀!」
ブツッ、と電話が切れた。
それから『お母さん』から着信は無い。私のことが心配でなくなったのか、それとも妹がお母さんに何か言ったのか、理由は分からない。
(また、助けられちゃったなぁ)
あの時、妹が一人暮らしを進めてくれなかったら、ずっとお母さんの言いなりだった。
好きでもない服を着て、行きたくなかった学校に行って、興味がない会社を受け続けた。言うことを訊けば、お母さんは喜んだ。妹に対する暴力もない。私が我慢すればいい――そう思っていた。
「お姉ちゃん、もういいと思う」
妹の一言で、私は自分の意志で夢を持てた。
妹は、私には出来なかったことをしていた。私の誇りだった。希望の光だった。そんな光が指し示してくれた先を進みたいと思う。
「ありがとう……」
晴れて私は、母から卒業する。自分の意志で、未来を決めるんだ――
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