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「お姉ちゃんは今、勉強してるんだから邪魔しないの!」
そう言われてから一度も入ってない。
姉は小学校から受験をしていて、ずっと勉強をしていた。そのせいか一緒に遊んだ記憶は、数える程しかない。
私は母に「受験をしなさい」と言われた。一応、受験をしたけど……結果は残念ながら不合格。それから母の暴力が始まった。
「なんで! あんたは! 勉強が出来ないの! なんで! お姉ちゃんと違うの!」
そう泣き叫びながら母は、私を殴った。
泣きたいのは私だ。
姉と同じ学校に行きたかった。だから好きでもない勉強もがんばれた。でも、結果はダメだった。
私は姉とは違う――
母に言われるまでもなく、実感した。
バシバシと乾いた音、私の泣き叫びながら謝る声が、リビングに響く。姉はそれをドア越しから訊いていたらしく、勉強に力を入れたらしい。
「ごめんね……亜紀」
姉は静かに謝ってくれた。助けることが出来なかったこと、殴られないために勉強に励んだこと。
「別に、大丈夫」
私は姉と目を合わせずに、冷たく突き放す。
それから私と姉は、言葉を交わさなくなった。何を話せばいいのか分からず、わざと時間をズラして生活をした。元々、母に姉の邪魔をするなと言われていたので、苦ではなかった。むしろ気が楽だった。
「由美ちゃんは本当にすごいね~! 自慢の子よ~!」
母が姉を褒めるところを見ないで済む。
母は何度も姉を抱き締めて、何度も頭を撫でる。私には一度もやってくれない。いや、してくれなくなった。
私はより一層、母に反抗するようになった――
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