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姉妹の夢
★☆
家を出たがらない姉の背中を押す。
姉の足枷には、なりたくない。私のせいだと言われたくない。
「大丈夫、私も高校を卒業したら家を出るから」
母は姉が言うことを訊いていれば、私に対する関心が薄れる。姉のサポートに徹している時は、私に暴力を振るうことがない。
「でも、まだ二年あるよ……」
「何かあったらお姉ちゃんの家に遊びに行くよ。あ、一緒に暮らすのもいいかも」
「一人暮らしって不安だから、遊びに来てね。絶対だよ!」
(久し振りにお姉ちゃんの笑顔を見た)
さっきまでとは違う、満面の笑み。
この後、私と姉は一人暮らしをしたら……と夢の話をした。小学生の時に、将来の夢を語り合った日を思い出す。
(あの時のお姉ちゃんは、なりたいものがあって……キラキラ輝いてた……)
だから、姉と同じ小学校に行きたかった。受験に落ちた時、私はショックだった。勉強だってちゃんとした、準備もちゃんとした。
それなのに、私は……お姉ちゃんと違う――
母に殴られなくても、怒鳴られなくても、分かってる。それなのに、追い打ちをかけるように責め立てられて、何もかも嫌になった。
私はお姉ちゃんと違う!
そう決心して、私は姉の背中を追いかけるのをやめた。姉から卒業をして、自分の道を進むんだと決めたら、少しだけ心が軽くなった気がした。
「私と同じように、お母さんもお姉ちゃんから卒業すべきなんだよ」
「え?」
「ううん、なんでもない」
それより、どこに住むの? と姉の一人暮らしの場所をスマホで地図を見ながら考える。
ドアの向こう側で、母が聞き耳を立てているとも知らずに――
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